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おすすめの本の紹介

「ひとりでも生きられる」瀬戸内寂聴

 人というものは社会というものに放り込まれると、おのずと自らの所属する社会の「道徳観、倫理観」と「自分の信念、自分の道徳観、倫理観」をすり合わせながら、バランスをとって生きていかねばならなくなります。

 瀬戸内寂聴は、それらの体験や葛藤を(私)小説やエッセイで描くのが、とても得意な作家だと思っています。そして、あまりにも正直に赤裸々に持論を展開するため、その時代時代で波紋を呼んだのですが、その行動力がまた、爽快です。

 出家なさった後だからこそ書けることかもしれませんが、彼女の人生は火のついた石ころのようなもので坂道を転がり落ちていきながら、周囲の多くの人たちを巻き込んで、さらに大きな火だるまになって、速度を上げて転がり続ける、私にとってはそんなイメージがあります。

 恋愛の場数を踏んだ人間なら、恋愛に既成の道徳観や倫理観など通用しないことなど分かりきっていることでしょうし、逆に恋愛というものがそれほど収拾のつかないものだからこそ、それぞれの社会で道徳観や倫理観、法律などで厳しくそれらを戒める必要があるのだとも思えるでしょう。この「一人でも生きられる」は特に「愛」や「恋愛」について、また男と女のありようについての寂聴氏独特の持論が展開されています。

 例えば上記のように倫理観や道徳感を飛び越したところで大きな火だるまに巻き込まれたとして、あるいは巻き込んでしまったとしましょう。私自身がそういうタイプだからそう思うのかもしれませんが、その時に怒り、悲しみ、深く傷ついたとしても、その一瞬に全ての情熱を注いだその時間というものは、私にはかけがえのないもので、ひとかけらの後悔もないのです。そして不思議と甘美な思い出になってしまったりするのです。そういったところが、私と瀬戸内寂聴をつなぐ共通の感覚なのではないかと思うのです。言うほど場数は踏んでませんけどね…

 恋愛にしても、人生にしても、人は常に、これでもかというくらい、次々に決断をせまられます。一時的には「決断」から逃げることはできますし、「決断」を人にゆだねることもできます。ですが、決断から逃げれば状況は変わらないし、人の言うことをうのみにして失敗した人は、その相手を一生責め続け、自分をかえりみようとしなかったりします。そんなことにならないためにも、是非この本を読んでみてください。

 恋愛や不倫、夫婦生活に迷う人々に、決断のヒントをもたらしてくれる良い本です。 

 

 

ひとりでも生きられる (集英社文庫)

ひとりでも生きられる (集英社文庫)